「FXは最強の後出しジャンケン。事実を確認して、勝った方に入るだけ」——そんな解説動画を見かけました。中身を要約すると、

  1. レンジの中ではトレードしない
  2. 前の週足の高値を上抜けたら買い(事実確認=後出し)
  3. 損切りは前週安値の少し下。ストップ幅を事前に認識し、飲めないならノートレード
  4. トレンド継続中は、週足が確定するたびにストップを直近の安値へ切り上げ(ダウ理論)

という、古典的な週足ブレイクアウト+トレイリングです。主張自体に嘘はなく、資金管理の説明もまともでした。ではこのルール、実際に食えるのか。10.6年分のUSDJPY実データで白黒つけました。

結果:「トレンド年だけ勝つ」古典そのもの

項目 結果
取引回数 230回(10.6年)
勝率 36.1%
プロフィットファクター 1.12
年別成績 11年中6年マイナス(4年連続マイナスの期間あり)
1%リスク複利の年率 +0.4%(最大DD -21.7%)
スプレッド2倍ストレス PF1.09(ほぼ消滅)

利益は円安の大トレンドが出た3つの年に全部集中していました。それ以外の年はコストを払い続けるだけです。「後出しで事実を確認する」のは心構えとしては正しいのですが、コスト後の期待値はPF1.1前後で、これは統計的にはノイズと区別がつかない水準です(1トレードの平均利益は+0.03〜+0.08R)。

破産はしにくい代わりに、次の大トレンドが来るまで数年間の我慢を強いられる——教科書どおりのトレンドフォローの性質そのままでした。

おまけ: 検証中に「勝てるように見えるバグ」を踏んだ話

ここからが本題かもしれません。「数値を変えれば勝てるのでは」と、参照期間×バッファ×利確幅の40通りを総当たりしたところ、1つだけ突出して良いセルが出ました。前日高安ブレイク+1R利確で、統計的にも有意に見える成績です。

しかし精査すると、正体は手法ではなく検証コードの楽観バイアスでした。同じ1時間バーの中で「利確→その足の始値で即再エントリー」を許していたのです。これは現実には不可能な約定です。「決済した足では再エントリー禁止」の1行を入れた瞬間、この好成績は崩壊しました。

当ラボではこれで同種の偽陽性の検出は8例目です。バックテストで異様に良い数字が出たときほど、手法よりも先に検証コードを疑うべき、という実例として記録しておきます(詳しくはフォワードとバックテストが乖離する5つの理由)。

ちなみに修正後の最良セルも、過去の別期間で答え合わせすると合格基準の半分程度の強度しかなく、結論は変わりませんでした。

まとめ

自分で検証してみたい方は実ティックバックテストの手順からどうぞ。

※本記事は当ラボが公開情報のみをもとにPythonで再現・検証した結果です。検証条件:USDJPY実データ10.6年(2016〜2026年)、実測スプレッド+スリッページ込み、同一バー再エントリー禁止。特定の個人・チャンネルを誹謗する意図はありません。