TikTokやInstagramを見ていると、「ゴールドを自動で買い増すだけ」で残高がぐんぐん増えるEAの広告が流れてきます。 画面には増え続ける残高。キャプションには「ほったらかしで月収○○万」。
本当ならすごい。なので、いつも通り中身をそっくりPythonで再現して、実データで回してみました。
数字は盛りません。結論から言うと——広告そのままの設定は、3年で293回死にました。
広告のEAの中身
広告の画面から読み取れたロジックは、驚くほど単純でした。
- 金(XAUUSD)が5分間上がっていたら買い(0.6ロット)
- 上がり続ける限り最大8本まで買い増し
- 損切りなし。合計の含み益が$150になったら全部決済
- 資金は広告と同じ$736からスタート
これを金の直近3年分・1分足の実データ(2023年7月〜2026年6月、スプレッド$0.20込み)で回しました。 飛んだら翌日また$736入金して再開、という「広告主と同じ動き」も再現しています。
結果:3年間の全記録
| 設定 | 差し引き損益 | 入金した総額 | 破綻回数 |
|---|---|---|---|
| 広告そのまま(TP$150) | −$39,118 | $216,602 | 293回 |
| 利確を小さく(TP$50) | −$632,123 | $632,860 | 858回 |
| 利確を大きく(TP$300) | −$424,362 | $425,099 | 576回 |
| ロットを1/10に | +$19,407 | $10,314 | 13回 |
| ロットを1/100に | +$2,999 | $737 | 0回 |
| 同じ$736を金にして放置 | +$858 | $737 | 0回 |

広告そのままの設定は、入金し続けた$216,602が$177,484になって返ってきた、というのが3年間の実態です。 しかも破綻した回の半分は、始めてから約1.2時間以内に死んでいます。損切りが無いので、金が少し下がっただけで積んだポジションがまとめて強制ロスカットされるからです。
いちばん皮肉なのは最後の行です。同じ$736を金にして放置しただけの人が、このEAに勝っています(この3年、金は約2.2倍になりました)。破綻リスクはゼロで、です。
じゃあ、なぜ広告では増えて見えるのか
種明かしは2つあります。
① 死ぬ直前までは、本当に増えて見える
このEAの勝率はとても高く、3年で7,412回も利確しています。高勝率ナンピンEAがコツコツ勝ってドカンと飛ぶ仕組みとまったく同じで、録画するタイミングさえ選べば「増え続ける残高」はいくらでも撮れるんです。そのあと数時間で死ぬとしても。
② 相場が良い時期だけを見せられる
破綻293回の内訳は、2023年が114回・2024年が179回。そして2025〜2026年はゼロでした。 この2年は金がほぼ一直線に上がり続けた、この手法にとって最高の追い風だったからです。 つまり「最近ずっと勝ってます」という実績画面は、ウソでなくても追い風の期間を切り取っただけの可能性が高い。バックテストの数字が嘘をつく仕組みと同じ構図です。
「ロットを下げれば勝てる」のか?
表を見ると、ロットを1/100にすれば破綻ゼロで+$2,999。「じゃあ小さく回せばいいのでは?」と思うかもしれません。
でもこれは3年かけて+$3,000、つまり月$80ちょっとの世界です。広告が見せる「月収○○万」の夢とは別物ですし、 その利益の源泉はEAの賢さではなく、この3年の金の上昇そのものです。それなら買って持つだけのほうが強い、というのは金の10年検証で出た結論と同じです。
損切りの無い買い増し戦略は、ロットを下げても「破綻までの時間が延びる」だけで、構造は変わりません。 生き残りたいなら、手法より先に負け方をコントロールする資金管理です。
まとめ
- SNS広告の「金を買い増すだけEA」を実データで再現 → 広告設定そのままは3年で293回破綻・差し引き−$39,118
- 破綻の半分は開始から約1.2時間以内。損切りが無いので、下がったら一撃で終わる
- 増えて見えるのは死ぬ直前の録画と追い風期間の切り取り。ウソの数字ですらない、が実態はこれ
- 同じ資金を金にして放置したほうが増えた(+$858・破綻ゼロ)
広告のEAを買う前に、まずデモと少額で自分で確かめる手順を持っておくと、この手の広告に払うお金はゼロになります。
※本記事の数値は当ラボがPythonで再現・検証した結果です。検証条件:XAUUSD 1分足(2023-07〜2026-06)、スプレッド$0.20/oz、初期資金$736.74、破綻後は翌日再入金で再開。