「スワップだけで年680万円、オルカンより儲かる(かも)」——こう紹介されるCHF/TRY(スイスフラン/トルコリラ)のスワップ狙いを、10年分の実データで検算しました。

紹介する側は動画内で自ら「為替差損はまだ考慮していません。スワップだけで計算しています」と明言しています。ここが検算のポイントです。

主張の中身

1万通貨をショート(証拠金35万円・レバレッジ約5.8倍)でスワップ1日1,867円 → 年間約68万円 → 証拠金利回り194.7%。10万通貨なら年680万円、という試算です。

検証方法

ECB公式レートによるCHF/TRY・CHF/JPYの2015年末〜2026年7月の10.5年分(2,704営業日)と、両国の政策金利の推移を使ってスワップを理論値で再現。実際の業者実績(1日1,867円)と突き合わせたところ、パススルー率(業者がスワップをどれだけ還元しているか)は92%と分かりました。この条件で、動画と同じ設定(1万通貨・証拠金35万円・維持率100%割れでロスカット)を10年分シミュレーションしています。

結果:11年中6年が赤字、うち4回は証拠金ほぼ全損

スワップ収入 為替差損 純損益 証拠金比
2018 +8.8万 -40.6万 -31.8万 -91%(8月に全損)
2020 +9.0万 -40.6万 -31.6万 -90%(11月に全損)
2021 +18.7万 -51.0万 -32.2万 -92%(11月に全損)
2023 +4.5万 -33.5万 -28.9万 -83%(6月に全損)
2024 +74.2万 -17.9万 +56.3万 +161%
2025 +69.4万 -55.8万 +13.5万 +39%

動画が引き合いに出す「証拠金利回り194.7%」に一番近い実績は2024年の+161%で、これは10年に1回の当たり年です。開始月を1年ごとにずらして115パターン検証すると、ロスカット率は37%(3回に1回は強制退場)、12か月保有の純損益の中央値は-37%でした。

なぜこうなるのか

トルコリラはこの10.5年でスイスフランに対して95%近く下落しています(年率約33%の減価)。今の金利差(約37%)は、市場が「リラはそれだけ下がる」と織り込んだ結果そのものです。スワップと為替差損は同じコインの裏表で、動画は表(スワップ)だけを見せて、裏(差損)は「考慮していません」と自分で断った上で隠しています。2024〜2025年に勝てたのは、たまたま通貨の下落幅が金利差を下回った例外期間だったからです。

まとめ

高いスワップだけを見て通貨を選ぶ前に、バックテストの数字が盛れる仕組みと同じ「都合の良い期間だけ見せられていないか」という視点を持つと安全です。

※本記事は当ラボがECB公式レート・両国政策金利をもとに再現・検証した結果です。検証条件:CHF/TRY 2015年12月〜2026年7月(10.5年)、パススルー率92%(実業者実績と一致)。特定の動画・業者を誹謗する意図はありません。