「週末ギャップは月曜に埋まりやすい」「東京仲値やロンドンフィックスは狙い目」「ブレイクアウト手法はどの市場でも通用する」——こうした時間帯・カレンダー系のアノマリーを見聞きしたことがあるかもしれません。
当ラボでは「月2〜3%の新しいエッジが見つかるまで検証をやめない」という方針のもと、FX・株価指数・商品・暗号資産にまたがって29パターンを実データで検証しました。結論を先に言うと、新規採用はゼロです。ただ、負けた記録を隠さないのが当ラボの方針なので、全部公開します。
検証のルール(全パターン共通)
- 検証前に「何を試すか」を仕様として固定し、後から条件を追加する後出しを禁止
- 前半期間で仮説を立て、後半期間(未知データ)でも同じ傾向が続くかを別に確認
- 実勢スプレッド・スリッページ2倍のストレスをかけても崩れないか
- 既存の稼働戦略と値動きの相関が低いか
29パターンの結果一覧(抜粋)
| 候補 | 検証内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 週末ギャップフェイド(FX29ペア) | 週明けのギャップを逆張り | ❌ 見かけ上は好成績だったが、エントリーを1時間遅らせるだけで消滅。日曜の気配値が正常化するだけを拾っていた偽物と判明 |
| ロンドンフィックス(主要6通貨) | フィックス前後の値動きを狙う | ❌ 通常日はどの区切りでも大きくマイナス |
| 株価指数の月替わりアノマリー | 月末〜月初のロング | ⚠️ 米国の指数2市場では方向性が実在したが、未知データでの再現性が弱く単独では不採用(フィルター用途のみ有効) |
| 暗号資産の資金調達率選別 | 資金調達率が高い時だけロング | ❌ 選別せず常時ポジションを持ち続けるほうが年率で上回った |
| 株価指数のセッションレンジブレイク(複数市場) | 東京時間のレンジを欧州時間にブレイク | ❌ 為替では機能する型だが、他市場では全滅。市場ごとの値動きの癖に依存 |
| 特定市場の夜間ドリフト | 夜間だけ上昇しやすいという仮説 | ❌ 直近数年だけ強く、10年通しでは基準未達 |
| 商品(原油)のセッション別方向 | 米国時間帯のロング | ❌ 明確にマイナス |
| 金曜→月曜の持ち越し | 週末をまたいでポジション保有 | ❌ 株価指数・商品の4市場すべてで一貫してマイナス。週末持ち越しはリターンでなくコストだった |
一番の収穫:「日曜の気配値」の罠
今回いちばん価値があったのは、負けた検証の中身です。
週末ギャップフェイドは、最初の集計では非常に良い成績(未知データでも好調)に見えました。しかしエントリーを1時間遅らせただけで、利益が跡形もなく消えました。原因を追うと、利益の全部が「日曜深夜の気配値が、月曜の実際の取引時間に向けて正常化するだけ」の値動きに乗っていたことが判明。気配値の段階では実際に売買できないため、理屈の上でしか成立しない偽物のエッジでした。直近数年の「勝率98〜100%」という数字自体が、この偽物である何よりの証拠でした。
同じように、時刻を使う検証では「協定世界時(UTC)で固定する」のと「現地時間(サマータイム調整込み)で固定する」のとで、結果が逆転するケースも見つかりました。片方の時刻基準だけで「勝てた」と判断すると、実は「その時刻のデータが存在する日だけを偏って拾っていた」という罠にはまります。
まとめ
- カレンダー・時間帯系のアノマリー29パターンを実データ検証し、新規採用はゼロ
- 「週末ギャップは埋まる」の好成績は、気配値の正常化という約定できない現象を拾っただけの偽物だった
- 時刻の基準(UTC/現地時間)を変えるだけで結果が逆転するケースがあり、片方の基準だけで判断するのは危険
- 金曜→月曜の持ち越しは、検証した4市場すべてで一貫してマイナス(リターンでなくコスト)
「バックテストで勝率98%」のような派手な数字を見た時は、こうした約定できない値動きを拾っているだけではないかをまず疑うと安全です。バックテストの数字が盛れる仕組みや実ティックでの検証手順も合わせてどうぞ。
※本記事は当ラボが実データをもとにPythonで再現・検証した結果です。検証対象:FX29ペア・複数の株価指数/商品CFD・暗号資産(いずれも2016年前後〜2026年、実勢スプレッド2倍のストレス込み)。特定の情報源を誹謗する意図はありません。